大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和46年(オ)27号 判決 1971年4月08日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人波多野義熊の上告理由について。

民訴法七四八条により、仮差押の執行については、特別の定めがある場合を除き、強制執行に関する規定が準用されるのであるから、債権の仮差押の執行には同法五九八条三項の準用があり、仮差押命令が第三債務者に送達された時に仮差押の効力を生ずるものと解すべきである。そして同法七四九条三項が、仮差押の執行は債務者に仮差押命令を送達する前においてもこれをなしうる旨規定するのは、仮差押を迅速にかつ債務者に予知させることなく執行する必要があることによるものであるから、債権の仮差押にもその適用を否定すべき理由はなく、債権仮差押命令を債務者に送達する前においても、その執行としてこれを第三債務者に送達することができるものと解すべきところ、このように仮差押命令が債務者に送達される以前に第三債務者に送達された場合においても、仮差押の効力は第三債務者に対する送達の時に生ずるものと解するのが相当であり、このように解することが右規定の趣旨とするところに合致するものというべきである。

したがつて、被上告人補助参加人の申請にかかる仮差押命令が第三債務者である被上告人に送達された時に仮差押の効力を生じ、その後に上告人の得た債権転付命令は、仮差押の目的たる部分につき無効であるとした原判決の判断は正当であつて、右判断に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤林益三 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎 裁判官 下田武三)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例